バラ摘みの旅

月刊 貴子 on 7月 6th, 2010
 

みなさま、こんにちは。今日は先月、生まれて初めて訪れたトルコへの旅の思い出について綴らせていただくことにします。
6月中旬、アロマテラピーの知識を深める旅―【香りの旅・トルコ編】にドイツ人のアロマテラピスト、医療に携わる看護師さん、薬剤師さんたちに混じって、参加することになりました。今回の旅の趣旨は、バラを自ら摘み、バラが精油になるまでの過程を勉強するというものです。アロマテラピストでもある私はバラについての効用は知っていても、生のバラから精油が作られる工程は体験したことがなかったので、アロマテラピーをもう一度見直し、知らない国を垣間見る大きなチャンスとなりました。日程が終わり、帰途についてみると今回の旅はアロマの知識を深めただけでなく、人間のあり方を考え直すきっかけとなった旅となっていました。


アンビエンテ トルコ風景実は私は個人的にトルコに対して、情報を持ち合わせていなかっただけでなく、あまいい印象を持っていなかったのですが、降り立った空港で、もはやその印象は変わっていきました。まず一番最初に感じたのは、人々の人間味あふれる光景でした。空港でだれかを出迎えている人々は満面に笑みを浮かべ、愛情豊かに互いにしばらくぶりの再開を心から喜びあう姿があちらこちらで見られました。その後、農家のおうちにお邪魔して、現地の人々に接近する機会がありましたが、いつもそこには暖かな愛が存在していました。トルコにいる間中、一貫してそこにあったのは人情でした。

 

アンビエンテ トルコ街並 モスクがほどよく溶け込んだイスタンブールは、エネルギーあふれる、とてもエキサイティングな町でした。貧富の差が激しく、貧しい人も多いトルコですが、みんなとにかく元気で生きているなというのが印象でした。
とても感動したのは猫があちこちに平和に寝ていたことでした。人を怖がらないところをみると、ごはんももらい、その存在を認めてもらっているのでしょう。犬にしても然りで、鎖につながれもせず、のんびりと道端で昼寝をしていました。 野良犬かなと思いましたが、耳に鑑札がついていたので、どこかの家庭に所属しているのでしょう。動物と人間が一緒に共存できているとしたらそれは素晴らしいことだし、実は衛生面などいろいろ問題もあるかもしれないけれどそのままであってほしいなと思いました。

 

イスタンブールを離れたあと、行った先は、イスパルタというバラの町。ここで、生まれて初めてバラ摘み体験をすることになりました。
当日は朝4時に起床。6月といえども、山の早朝は寒いと注意があり、セーターを着込み、泥んこになってもいい出で立ちで、日の出前の真っ暗な中を出発し、車に揺られること1時間半、バラが栽培される村へと到着しました。
私を案内してくれた農家の人たちは、30代の夫婦と15歳の少女。バラの正しい摘み方を習ったあと、バラの咲く畑へと山の中を入って行きます。雑草をかき分け向かった先には、何百のピンクのバラが花開いていました。額の部分にも精油が宿っているとのことで、夜露に濡れたバラを注意深く額の部分から摘んでいきます。現地の農家の人にとってはこれが一家を支える収入源となるため、バラ摘みはお金に変わる大事な仕事なわけですが、私にとっては、バラに囲まれ、自分の手でたくさんのバラを次から次へと摘んでいく作業は、心の底から癒されるようなすてきな時間でした。
アンビエンテ イスパルタ風景アンビエンテ イスパルタ風景

 

その後、摘んだバラを大きな袋に詰めて、山を降り、農家で朝ごはんをごちそうになりました。決して裕福ではない農家の朝ごはんは、質素なものでしたが、家族が集まって一緒に食べる朝ごはんは、身体を作る栄養とともに、心を満たす愛のエネルギーも入っているようでした。アンビエンテ イスパルタ食事風景常々私は思うのですが、朝ごはんを家族とともに一緒に食べるというようなベーシックなことは、人生上、とても大事だと思うのです。ベーシックなことをおろそかにすると、年をとったときに何か満たされない思いがついてまわる気がします。人生で大きなことを成し遂げるためにも、基本となることを日々の暮らしの中でしっかりやっていきたいと思います。そうすることによって、人生の困難に立ちはだかったとき、人としての判断がぶれないし、自分は一人ではなくて、だれかに支えてもらって生きているということが思い出せて、現実に向かう力が湧いてくるのではないかと思うのです。

 

アンビエンテ イスパルタ風景その後、私たちは農家を離れ、袋詰めされたバラとともに、蒸留所に向い、そこで蒸留器にバラを入れ、精油とバラ水が出来上がっていくすべての工程を学びました。
1滴の精油は30個分のバラを必要とします。だからとても高額になってしまうのですが、バラはかぐわしい香りをもつだけでなく、身体に心にそして、魂にも役立ってくれます。私の体験でいえば、愛が枯渇しているとき、自分の愛をもっと引き出したいときにバラの香りに包まれると、自分が女性であることをもう一度認識でき、そして、受け入れるという心の余裕ができるような気がします。やるべきことが山積みの毎日にあって、この心の余裕はとても大切で、この余裕のあるなしが、その人の魅力を決めるといってもいいぐらいに感じます。アロマテラピーをうまく医療に取り入れているドイツでもバラはストレスや悲しみの中にあって、精神的に苦しんでいたり、うつ状態の患者さんに用いられているといいます。

バラの宣伝マンになってしまいましたが、バラの精油に触れたことのない方はぜひ、バラの香りに触れていただきたいものです。世の中にバラの香りに似せた香りが出回り、それはそれで、いい香りですが、ぜひともバラからできたバラ精油を身体にまとい、自分の心がどう変化するのかを試してみてください。私は毎晩寝る前に1滴のバラ精油を胸のあたりに塗り、バラの香りに包まれて眠ることにしています。

 

アンビエンテ イスパルタ風景バラ体験のあと、地中海に面したリゾート地に移動し、トルコのオーガニック農業について勉強しました。トルコは肥沃な土地とあふれるばかりの太陽のもと、たくさんの野菜や果物が取れます。さくらんぼ、桃、オレンジ、りんごにざくろ。熟した果物がたわわに木になっているのを見ると、心から満たされた気持ちになって、わくわくしてくるのでした。果物の木ってほんとうに豊かさを連想させてくれますね。

1週間の旅はあっという間に過ぎました。EU加盟をめざして、急成長しているトルコはこれからどんどん変わっていくことでしょう。こういう急成長のときには、人々のエネルギーもハイになっていて、不可能を可能に変えてしまうようなエネルギーが今、トルコにはあるようです。また近い将来、必ず訪ねようと心に決め、トルコを去りました。

アンビエンテ イスパルタ風景

 

アンビエンテ イスパルタ風景その後、約2週間がたとうとしている今、トルコで見たもの-豊かな農産物、美しき風景、暖かな人情、生きる力が私の身体の中で消化された上で思うことは、生きているといろいろと乗り越えなければならない大変なことがあるけれど、自然がもたらしてくれるすばらしさや人間の愛を一度でも体験し、それが心に根をおろすと、怖いものが無くなって、何かあっても、おろおろせずに生きていけるような気がしました。そんな意味でこのトルコで、前より強い人になれた気がしています。

月刊 貴子