バリ島の占い師

月刊 貴子 on 8月 25th, 2011
 

最近、日暮れがちょっと早くなり、夕方からは虫の音も聞こえるようになって、なんだかもう夏の終りを感じる季節となりました。
楽しくて、暑かった真夏の日々を振り返り、これからやってくる秋に備えて、心の準備をする季節の狭間にいる感じです。

今回は、去年の12月、バリ島に3週間滞在した際に書きそびれてしまったことを書かせていただきますね。

エリザベス・ギルバートという若手のアメリカ女流作家をご存知でしょうか。

ジュリアロバーツ主演の映画、『食べて、祈って、恋をして』の原作者といえば
きっとお分かりですよね。この映画は、原作者の経験に基づいて作られたもので、物語はバリ島のウブド村の占い師、KETUT氏の場面から始まります。

主人公は、バリ島の占い師に言われた通り、ニューヨークでの生活は魅力薄れ、なにかもも失い、人生の意味を求めて、イタリア、インド、そしてバリ島へ出かけて行きます。そして予言通り、もう一度KETUT氏のもとへ帰ってくることになり、さらに物語は進行していきます。

思えば、私もこのルート、イタリア―インド―バリ島と同じ道を辿り、かなり近い体験をしたものです。若いときに人は、情熱や勢いで思わぬことをしてしまうものです。

そのお話は、時が過ぎて、時効となったときに打ち明けさせていただくとして、今回は、私がこの映画の始まりを作った占い師、KETU氏に会いに行ったときのお話を聞いてください。

去年の12月、バリ島のウブド村に3週間した際、今回の滞在もあと1日を残すのみとなった最終日に、『食べて、祈って、恋をして 』の物語の始まりを作った占い師、KETUT氏を訪ねることにしました。

ウブド村はこの映画のおかげで、欧米、オーストラリアから一人旅の女性が押し寄せているとうわさには聞いていましたが、果たして、KETUT氏のところに着いてみると、映画の通り、緑と花にあふれた庭のあるバリ式の家屋には、すでに10数名の観光客らしき人たちが順番を待っていました。

バリには、予約というシステムはないらしく、みんなのんびりと構えて、自分の番を待っているのでした。

占いは水屋のようなオープンスペースで行われていて、KETUT氏は映画に出ていた俳優さんにくらべて、小柄なバリ人でした。映画では、占い師自身は俳優さんを起用していましたが、そこにいる中年のおばさんや犬たちは、本物で、映画と同じくそこで自分の本来の役を演じていました。

ひとりひとりの占いの時間もまちまちで、自分の番がいつ来るともわからない状況でしたが、せっかく来たのだし、もしかして、私の未来にはすごいことが待ち受けていると言われるかもしれないし、いろいろな国の人たちの悩みごとなどを聞けるチャンスでもあるので、腰をすえて待つことにしました。

聞こえてくる相談者のしゃべる内容はほとんど、ソウルメイトにいつ出会うかでした。来ている人はいろいろな歳の人がいたと思いますが、
若さがはじける歳というよりも、仕事のキャリアもある程度積んだようなアラウンド サーティーズ&フォーティーズが多かったのではないかと思います。

占いが終わったあとの反応はそれぞれで、『彼、みんなに同じこと言ってる。なんかちょっとがっかり・・・・・・。』とぐちをこぼしている女性たちもいましたが、スピリチュアルなイベントのプロデユーサーをしている立場の人間からするとそれはある意味当然で、その彼女たちは遊び半分で、しかも最初から疑ってかかっていて、KETUT氏を試そうとしているので、納得できる答えはなかったのだと思います。いつも思うのですが、だれかにスピリチュアルな質問をするときは、まずはこちらが心を開き、いいアドバイスがもらえるような配慮も必要です。なかには、占い師はアドバイスをするのが仕事だから、どんな人も受け入れて当然と思う人もいるかもしれませんが、なんといっても、相手は心がある、生身の人間ですから、尊敬の念が必要だと思います。やはり、私たちはどんなときでも、どんな相手でも思いやりを持って、交流をしたいものです。そして、こういうスピリチュアルな場では、相手を尊重しないと、本当の答えは却って来ない可能性もあります

途中、熱帯雨林のバリ島らしく、大粒の雨が降り出し、庭の緑や花々が雨に濡れるさまは、自然の生命力を感じ、なんだか、アジア映画のひとこまにいる感じでした。雨音がだんだん激しくなって、スコールにしては長く続く雨でした。

バリ島はマジカルな島として有名なので、私の番になって、雨がぴたっと止んでくれるといいなと思いながら待つこと3時間。
やっとやっと私の番がまわってきました。
と、そのときです。あの大雨が、ぱたっと止んでしまったのです。
もしかしてこの3週間の間、毎朝、まだ薄暗いうちに起きて、太陽が昇る前のプラナを身体中に取り入れ、朝陽を浴びての瞑想とヨガでマジックが使えるようになったのかもしれません。朝陽の前に起きだして、瞑想やヨガをするとマジカルな力が宿るというのは、ヨガの先生や目に見えないことを仕事にしている人からよく聞く話です。
いづれにしても、ここはバリ。いるだけで不思議なことが日々起こる神々の島なのです。

さて、私の番となり、KETUT氏のとなりに座り、これから手相や人相をみて私の未来について語ってもらえることとなりました。


どんなことから話したらいいのだろうと思っていたら、KETUT氏はちょっと休憩と言って、奥の部屋に消えていき、2,3分してから戻って来ました。
そして、胃の辺りをおさえ、ちょっとつらそうに最近の体の不調を私に話し始めました。聞くところによると、こうやって毎日毎日、何十人もの人の相談事を聞いていると、その人たちの助けてほしい気持ち、すがるような気持ちが乗り移り、胃や腎臓が痛くなるそうです。
私は日本でスピリチュアルなイベントのプロデュースをしているので、こういう話はよく聞きます。KETUT氏は映画以来、有名になってしまったので、世界中からソウルメイトの居場所を訪ねる女性の相談でへとへとになっているようでした。人の悩みを聞くというのは、そうそう簡単にできることではなく、聞く方は、自分の健康とお金を引換にしてしまうというのはよく知られたことです。

数分の間、氏が昔、ある日本人から日本の歌を習ったこと、氏が少し日本語を話せることなど、TETUT氏の身の上話をひとしきり聞いてから、
ようやく私の未来についての話になりました。手相、人相、足の形、背中などをみて、私の未来について語ってくれたことは
私はいろいろな仕事を同時にできる女性で、これから先4つのことをやることになる。それは
• Printing(出版、印刷関係) に関すること
• Computer (コンピューター) に関すること
• Writing (書くこと) に関すること
• Esthetic(美的なこと) に関すること

ということでした。だれにでも当てはまる答えではなく、この4つはどれも今の私の仕事とリンクしていることなのでちょっと驚きました。
そして、私の背中をみて、私はロータスフラワー(蓮の花)が見えると言っていました。それが何を意味するのかわかりませんが、蓮の花といえばスピリチュアルな花だし、スピリチュアルなことを仕事にしている私にはうれしい花でした。
そのほか、身体上で気をつけた方がいいことや結婚生活について話したと思います。

KETUT氏が言っていたのですが、
ほとんどの人は結婚生活がうまくいっていないけれど、どうしたらいいかと聞くそうです。もしかしたら、映画の主人公(作家エリザベスのこと)が離婚をし、その後すてきな男性と巡り合ったので、追体験をしたい人も多いのかもしれません。
やっぱり女性はいつもロマンを求めているのですね。安定した愛があってこそ、仕事もがんばれるのかもしれません。
私もかつて、仕事をもっとがんばりたい、そのためにも自分を愛してくれる人がほしいと切に願っていた頃がありました。でも随分年をとってから結婚したあとは愛があるからこそ、仕事もできるという考え方に変わりました。

翌日、私は3週間過ごしたバリにしばしの別れを告げ、深夜の飛行機に乗りました。
飛行機の中では、映画のリストに 『食べて祈って恋をして』 がやっぱりありました。再度、見てみると、そこにはなつかしい神秘的で緑あふれるTETUT氏の庭が広がっていました。
美しきバリ。女性に未来の夢とロマンを与えてくれるマジカルアイランド。もう何十回とバリ島を訪れたことがありますが、私の場合は、バリ島の太陽と緑と花々に囲まれて数日を過ごすと、不思議なことに願っていたことが現実になります。
バリのお坊さんに浄化の儀式をしてもらい、自然の神様にお願いをしているからなのか、バリで心底リラックスして、リフレッシュされるからなのか、またはバリの不思議な力が働くのか、理由はわかりません。でもバリにはたくさんの神々が存在し、バリの人たちが朝、晩、かかさずお花とごはんをお供えし、お線香を炊いているのをみると、神様は大勢存在していて、お願いを叶えてくれているのかもしれません。

人を不思議な世界へ誘うガムラン、村人による陶酔のバリ舞踊、むせかえるような南国の花々、ミステリアスに輝く月、バリの男の人たちが吸っているクローブの入りの甘いタバコの香りなどなど、バリには魅惑的なものばかり。その上、行って帰ってくると、何か人生の流れが変わるのです。

私は夜間飛行の間中、ワインを飲みながらKETUT氏に言われたことを回想し、これからの人生に思いを馳せていました。

そして、時は流れ、今は2011年の夏の終り。あれから、日本には大震災が起こり、個人的には母が亡くなり、生活の拠点も変わり、めまぐるしくいろいろなことが起きました。仕事の方にも少しづつ変化が起こりつつあります。TETUT氏に言われたようにこれから私の仕事は上記の4つに集約されていくのかもしれません。ほんの数カ月の間にめまぐるしくいろいろなことが起きて、ときに押しつぶされそうになって、深く落ち込んでしまったこともありますが、そんなときは、私には、バリという帰っていく島があり、そこに行きさえすれば、次なる扉が用意されることを思い出し、涙を拭いて先を歩いていけるのです。

月刊 貴子